相続登記に遺産分割協議書は必要?不要なケースや作成方法、記載例を紹介

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本記事の内容は、原則、記事執筆日(2024年12月18日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

不動産を相続する際には、相続登記の手続きを行うこととなります。そして手続きの際には登記申請書とともに「登記原因証明情報」となる書類を添付する必要があります。

登記原因証明情報には、相続人が複数いる場合「遺産分割協議書」を添付するのが一般的です。しかし、ケースによっては遺産分割協議書が必要ない場合もあります。

相続登記は義務化されている手続きなので、速やかに手続きをする必要があります。今回は、相続登記で遺産分割協議書が必要なケースや遺産分割協議書の記載方法などを紹介します。

相続登記に遺産分割協議書は必要?不要なケースや作成方法、記載例を紹介

不動産を相続する際には、相続登記の手続きを行うこととなります。そして手続きの際には登記申請書とともに「登記原因証明情報」となる書類を添付する必要があります。

登記原因証明情報には、相続人が複数いる場合「遺産分割協議書」を添付するのが一般的です。しかし、ケースによっては遺産分割協議書が必要ない場合もあります。

相続登記は義務化されている手続きなので、速やかに手続きをする必要があります。今回は、相続登記で遺産分割協議書が必要なケースや遺産分割協議書の記載方法などを紹介します。

遺産分割協議書が必要な場合

相続登記に遺産分割協議書が必要になる場合

相続登記に遺産分割協議書が必要となるケースについて、解説します。

法定相続分ではない遺産分割のとき

民法には、被相続人(故人)と相続人の関係に応じた相続分が規定されており、これを「法定相続分」といいます。

法定相続分はあくまで目安であり、異なる割合で遺産分割しても問題ありません。その場合、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)、遺産分割協議書を提出します。

遺言書がないとき

遺言書がなく相続人が複数いる場合は、相続登記に遺産分割協議書が必要になります。ただし、法定相続分で遺産分割する場合や、遺産分割調停・審判を利用する場合は必要ありません。

遺産分割協議書が不要な場合

相続登記に遺産分割協議書が必要な場合もあります。

遺言書がある

遺言書に沿って遺産分割を行った場合は、登記申請書に遺言書を添付するため、遺産分割協議書は不要です。

また遺言書が公正証書遺言以外だった場合は家庭裁判所での検認を受けるため、遺言書とあわせて検認済証明書の添付を忘れないようにしましょう。

法定相続分での相続

登記をおこなう不動産について、法定相続割合で分割する場合は、遺言書も遺産分割協議書も不要です。

遺産分割調停・審判をする場合

遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合、調停や審判によって決定されます。そうなると調停調書もしくは審判書が作成されるため、こちらを遺産分割協議書の代わりに添付します。

相続人が一人だけ

相続人が一人しかいない場合、他の相続人と話し合う必要がないため遺産分割協議書は不要です。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書に決まった形式はありませんが、日付や名前を間違えないように注意しましょう。遺産分割協議書の書き方を間違えると、相続登記ができません。もし不安であれば、行政書士などの専門家に作成を依頼することができます。

また不動産情報も正確でないと申請が通らないため、所在や地積などは登記事項証明書どおりに記載します。以下は戸建てを記載した遺産分割協議書です。

遺産分割協議書(記入例)

被相続人 〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)
死亡日  令和〇〇年〇〇月〇〇日
本籍地  東京都△△区△△〇丁目〇番地〇
最終の住所地 東京都△△区△△〇丁目〇番地〇

被相続人〇〇〇〇(以下「被相続人」という。)の遺産相続につき、被相続人の妻〇〇〇〇(以下「甲」という。)、被相続人の長男〇〇〇〇(以下「乙」という。)、被相続人の長女〇〇〇〇(以下「丙」という。)の相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおりに遺産分割の協議が成立した。

1.甲は、以下の遺産を取得する。
(1)土地
   所  在   東京都△△区〇〇
   地  番   〇〇番〇〇
   地  目   宅地
   地  積   〇〇.〇〇平方メートル
(2)建物
   所  在  東京都△△区〇〇 〇〇番〇
   家屋番号  〇〇番〇
   種  類  居宅
   構  造  木造瓦葺2階建て
   床面積   1階部分 〇平方メートル
         2階部分 〇平方メートル
(3)動産
   上記(2)の建物内にある家具家財等一切の動産

2.乙は、以下の遺産を取得する。
(1)預貯金
〇〇銀行〇〇支店 
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇
口座名義人 〇〇〇〇

以上のとおり、甲乙丙相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証明するため、本協議書を3通作成し、甲乙丙相続人全員が署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。

令和〇〇年〇月〇日(作成日の日付)
住所     東京都△△区△△〇丁目〇番地〇
生年月日      昭和〇〇年〇〇月〇〇日
相続人甲(妻)      〇〇〇〇  実印

住所   神奈川県〇〇市△△町〇丁目〇番地〇
生年月日      昭和〇〇年〇〇月〇〇日
相続人乙(長男)     〇〇〇〇  実印

住所    埼玉県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
生年月日      昭和〇〇年〇〇月〇〇日
相続人丙(長女)      〇〇〇〇 実印

相続登記用の遺産分割協議書なら、不動産のみの記載でOK?

法務局に提出する相続登記用の遺産分割協議書は、預貯金や有価証券など相続財産すべて記載する必要はなく、不動産のみでも構いません。

不動産の売却を急いでいたり、相続登記を先行させたい場合は、不動産のみの遺産分割協議書を作成したほうが良いでしょう。

相続登記の期限は?

相続登記の手続きは令和6年4月1日より義務化されています。相続人は不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記をしなければいけません。

過去の相続にも義務化が適用されるため、登記が済んでいない方は手続きをおこないましょう。正当な理由なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となります。

マンションの場合

マンションの相続登記(不動産登記)

分譲マンション(区分所有マンション)の1室を相続するときは、建物と部屋(専有部分)、さらに敷地権を遺産分割協議書に記入します。

1.甲は、以下の遺産を取得する。

(1棟の建物の表示)
所  在 東京都△△区〇〇-〇〇
構  造 鉄筋コンクリート造陸屋根4階建
床面積  1階 〇平方メートル
     2階 〇平方メートル
     3階 〇平方メートル
     4階 〇平方メートル

(専有部分の建物の表示)
家屋番号 東京都△△区〇〇-〇〇
建物の名称 303
種  類 居宅
構  造 鉄筋コンクリート造4階建
床面積 3階部分 〇平方メートル

(敷地権の目的である土地の表示)
土地の符号 1
所  在 東京都△△区〇〇
地  番 〇番〇
地  目 宅地
地  積 〇平方メートル
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 1,000分の30

遺産分割協議書の作成時の注意

遺産分割協議書を作成するときは、以下の点に注意しましょう。

  • 遺産分割協議は相続人全員で行わなければならない(1人でも欠けた場合、当該協議は無効となる)
  • 不動産は登記簿の通りに記載する
  • 相続財産は、内容を特定できるように具体的に記載する
  • 協議を作成した日を明記する
  • 記入は手書き・パソコンのどちらでも可能。縦書き・横書きのどちらでもよい
  • 遺産分割協議書が真実であることの証明として、遺産分割協議者(相続人全員)は、協議書に実印を押印して印鑑証明書を添付しなければならない
  • 遺産分割協議書が複数枚になる場合、用紙と用紙の間に契印(協議者全員分)を押す。
  • 遺産分割協議書は後日の紛争を防ぐため相続人全員分を作成して各自所有しておく(登記申請には1通で足りる)

相続登記の必要書類

相続登記の手続きには、遺産分割協議書のほかに戸籍謄本や収入印紙などが必要になります。登録免許税を計算して収入印紙を貼る必要があります。

書類名発行場所発行手数料
法定相続による相続
(どのケースでも必要)
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式本籍地の市区町村役場一通450~750円
被相続人の戸籍附票一通300円
相続人全員の戸籍一通450円
新たに登記名義人となる相続人の戸籍附票一通300円
固定資産評価証明書もしくは固定資産税課税証明書固定資産評価証明書は不動産所在地の市区町村役場
固定資産税課税証明書は毎年自治体から自宅に届く
固定資産評価証明書は一通300円
収入印紙郵便局、コンビニなど登録免許税の金額分
登記申請書法務局窓口もしくは法務局ホームページ
返信用封筒郵便局、コンビニなど100~520円程度
遺産分割協議を行った場合遺産分割協議書
印鑑証明書相続人の住所地の市区町村役場一通300円
遺言書がある場合遺言書公正証書遺言は公証役場公正証書遺言は再発行が可能
一通250円
相続放棄をした人がいた場合相続放棄申述受理通知書相続放棄の手続きを行った家庭裁判所一通150円

所在や地積などを確認する方法

地積・地番を確認する方法

上記でも述べましたが、相続登記は不動産の情報を正確に記載しなければいけません。そのために登記事項証明書や固定資産税の課税明細書、土地・家屋の名寄帳などを取り寄せる必要があります。

このような書類の取得には意外と手間がかかるので、時間のない方は専門家に相談しても良いでしょう。

登記事項証明書

登記事項証明書は土地・建物の所在地を管轄する法務局で取得できます。土地の所在や地積、権利関係などが記載されているので、遺産分割協議書を作成する前に取得すると良いでしょう。取得には窓口申請か郵送申請、もしくはオンラインでも申請が可能です。

固定資産税の課税明細書

登記事項証明書を取得する際「地番」が必要になります。地番は「固定資産税の課税明細書」で確認します。

固定資産税の課税明細書は、毎年4月~5月ごろに送付される固定資産税納税通知書に同封されています。

しかし、免税点未満の私道や山林などは課税明細書に書かれていません。したがって課税対象になっていない不動産を確認するときは、「名寄帳」も確認しなければなりません。

土地・家屋の名寄帳

故人の所有する不動産をすべて確認したいときは、市町村役場で「名寄帳」を取得します。名寄帳には免税点未満の不動産も含め、被相続人の所有不動産が一覧表示されています。

固定資産税評価証明書

名寄帳を市区町村役場で取得するときは、あわせて固定資産税評価証明書も取得しましょう。

相続登記の際には登録免許税がかかりますが、固定資産税評価証明書は登録免許税の計算で使用します。

遺産分割協議書は返還してもらえる?

登記申請書に添付した遺産分割協議書や戸籍謄本は、あらかじめ「原本還付」の手続きをしておくことによって、返還してもらえます。

遺産分割協議書の原本還付の手続きは、遺産分割協議書のコピーを取り、コピーの方に「原本に相違なし」と記載し記名押印したものを遺産分割協議書の原本と一緒に提出すれば、登記完了時に原本が返却されます。

まとめ

今回は、相続登記に添付する遺産分割協議書について解説しました。

遺産分割協議書は、遺産分割がすべて終わらないと作成できないと思われがちですが、不動産のみで作成することも可能です。

しかし遺産分割協議書がきちんと作成できないと相続登記ができませんし、必要書類もすべて正しく揃えないといけません。書類の再作成や再提出も大変なので、自分で作成できるか不安な方は相続に強い専門家に依頼しましょう。

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