令和5年度税制改正の生前贈与加算と相続時精算課税・暦年贈与の節税方法を解説

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本記事の内容は、原則、記事執筆日(2023年2月8日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
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令和5年度税制改正の生前贈与加算と相続時精算課税・暦年贈与の節税方法を解説

令和5年度の税制改正大綱が2022年12月に公表されました。これは、政府与党のからの発表であり、今後は、国会に提出され審議されます。正式に可決施行されるのは令和5年3月から4月ごろになります。

この税制改正大綱には相続対策をする際には必ず知っておきたい「生前贈与加算」と「相続時精算課税」の改定が盛り込まれています。

生前贈与は何が変わるのか、これからはどのようなことを注意すればよいのか・・・。この記事ではわかりやすく解説していきます。是非参考にしてください。

税制改正による生前贈与の変更点

生前贈与加算が3年から7年に延長

生前贈与加算とは、相続などにより財産を取得した人が、被相続人(亡くなって財産を残す人)からその死亡前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、贈与を受けた財産の贈与の時の価額を、贈与を受けた人の相続税の課税価格に加算し、また、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額を、加算された人の相続税の計算上控除する制度のことをいいます。

わかりやすく言うと、例えば毎年110万円ずつ7年にわたり子どもに財産を贈与していた父親がいたとします。その父親が亡くなって相続を開始したとき、さかのぼって3年分の贈与は相続税の計算に持ち戻さなくてはならない、ということです。

いままでは3年でしたが、改正後の令和6年1月以降は生前贈与の持ち戻し期間が7年になります。

相続時積算課税贈与の改正

2500万円以外に毎年110万円の非課税

相続時精算課税は贈与された財産の総額が2500万円まで贈与税が非課税なりますが、改正後の令和6年1月以降はこの2500万円以外に毎年110万円ずつ贈与していてもそれには贈与税はかからず申告も不要になります。

毎年110万円の非課税は生前加算対象外(持ち戻しなし)

相続時精算課税で毎年110万円ずつ贈与していても贈与税がかからず、申告不要ですが、加えて生前贈与加算として持ち戻しをしなくてよいこととなります。つまり改正後の令和6年1月以降は110万円に対して相続税もかからず無税ということです。

税制改正後の節税方法

今回の税制改正で変更になる生前贈与加算と相続時精算課税、それ以外にも今まで知られている暦年贈与も活用することでの節税対策を考えていきます。

まず、あらためて、相続時精算課税と暦年贈与の仕組みについて説明していきます。

相続時精算課税とは

相続時精算課税とは、親や祖父母から贈与された財産の価額が2500万円まで贈与税が非課税になる制度です。

相続時精算課税はどんな人が利用できる?

贈与の年の1月1日時点で60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する場合に選択することが可能です。

相続時精算課税はどんな財産で利用できる?

贈与財産の種類にも制限はなく、現金や預貯金、有価証券、不動産などのあらゆる財産の贈与が暦年課税の対象となります。

相続時精算課税は2500万円まで非課税なの?

相続時精算課税は受け取った額の合計が2,500万円を超えるまで贈与税が非課税となる制度であり、この贈与された財産は、相続発生時に相続財産として加算され、相続税が課税されます。つまり、本来贈与税を課税するものを、相続税の対象にして、課税されるタイミングを 先送りにする制度ということです。

相続時精算課税での節税方法(令和6年1月~)

記事の冒頭でお伝えしましたが、相続時精算課税は次の2点が変更になります。

2500万円以外に毎年110万円の非課税

相続時精算課税は贈与された財産の総額が2500万円まで贈与税が非課税なりますが、この2500万円以外に毎年110万円ずつ贈与していても、それには贈与税はかからず申告も不要になります。

毎年110万円の非課税は生前加算対象外(持ち戻しなし)

相続時精算課税で毎年110万円ずつ贈与していても贈与税がかからず、申告不要ですが、加えて生前贈与加算として持ち戻しをしなくてよいこととなります。つまり相続税もかからず無税ということです。

暦年課税(暦年贈与)とは

暦年課税(暦年贈与)とは、1月~12月までの1年間に受けた贈与に対して課税する制度です。

この場合の暦年とは、1月~12月までの1年という意味です。

暦年課税はどんな人が利用できる?

暦年課税は、贈与者(贈与した人)についても、受贈者(贈与を受けた人)についても制限はなく、誰でも利用できる制度です。

POINT
受贈者と贈与者

受贈者(じゅぞうしゃ)とは、贈与を受けた人のことをいいます。 つまり、「財産をもらった人」です。
贈与者(ぞうよしゃ)とは、贈与をした人のことををいいます。 つまり、「財産をあげた人」です。

暦年課税はどんな財産で利用できる?

贈与財産の種類にも制限はなく、現金や預貯金、有価証券、不動産などのあらゆる財産の贈与が暦年課税の対象となります。

また、財産を贈与された場合だけでなく、債務の免除を受けたり、相場の価格よりも安い金額で売ってもらったりした場合も、相場の金額との差額部分について暦年課税の対象となります。

暦年課税と毎年110万円まで非課税とどんな関係がある?

暦年課税には年間110万円の基礎控除があります。

贈与には贈与税が課税されますが、贈与税は課税価格(贈与税の課税対象となる1年間に受けた贈与の総額)から基礎控除額を差し引いた金額に対して課税されます。

贈与税の課税対象となる金額の計算式

1年間の贈与額-110万円=贈与税の課税対象となる金額

年間110万円までは、贈与を受けても贈与税が課されません。また、110万円を超えた場合は、その超えた分に対してのみ贈与税が課されます。

なお、複数人から贈与を受けた場合でも、基礎控除額は年間110万円で変わりません。

暦年贈与での節税方法

今回の税制改正では暦年課税制度に対しての直接的な変更はありません。

しかし、暦年贈与した場合も生前贈与加算の対象となります。生前贈与加算は3年から7年に延長されたるため、暦年贈与もその贈与した年数に応じて相続財産へ持ち戻しをします。

ただ、暦年贈与は、相続によって遺産を受け取らない人にも活用することができます。

例えば、相続人でない子どもの配偶者や甥や姪へ贈与していたとしたら生前贈与加算の持ち戻しの対象になりません。

この部分に着目し、暦年贈与について検討してみるとよいでしょう。

まとめ

令和5年度の税制改正について説明してきました。

この改正後に活用できそうな節税対策は以下の2点にあります。

  • 相続時精算課税を活用した110万円の贈与が非課税
  • 暦年贈与は生前贈与加算対象外である

ただ、これ以外にも贈与税の特例制度など生前贈与で活用できる制度がありますので是非有効に活用しましょう。

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