結婚資金の贈与やご祝儀を非課税で受け取れるケースは?一括贈与の非課税制度についても解説
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親が結婚資金を贈与してくれる場合に気になるのが、贈与税がかかるかです。せっかくお金を出してくれるのに、税金がかかったららがっかりしますよね。
この記事では、結婚式の贈与やご祝儀を非課税で受け取れる範囲についてわかりやすく説明します。
また、「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」という制度があります。この制度を利用した方がよいケースについても説明します。
是非、参考にしてください。
目次
どういう場合に贈与税がかかる?
自分がもつ財産を無償で他者に譲ることを「贈与」と呼び、その際発生する税金が「贈与税」です。贈与を受けた人は贈与税を支払うことになります。
親から結婚資金の贈与されたり、結婚式でご祝儀(祝い金)をもらった場合に贈与税はかかるのでしょうか?
結論から言うと、かかる場合とかからない場合があります。
贈与された財産には、基本的には贈与税がかかりますが(年間110万円までの暦年贈与であれば贈与税はかかりません)、例外的に贈与税がかからない財産もあります。
例えば、次の財産には贈与税がかかりません。
贈与税がかからない場合
- 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
- 個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの
- 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
扶養義務者からの贈与
父母等からの結婚資金の贈与についてが上記の1に当たるかどうかによって、贈与税がかかるかどうかが決まります。
通常は生活費、医療費、出産日、留学費などが該当し、結婚式や披露宴の資金も贈与税の対象になりません。
個人からもらうご祝儀
いろいろな人からもらうご祝儀については、上記の2に当たるかによって、贈与税がかかるかが決まります。基本的には、あくまでお祝いとしてご祝儀に贈与税はかかりません。
ただし明らかにご祝儀としては多すぎる金額をもらうと、課税対象となる可能性があります。
直系尊属からの一括贈与
3については、「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」という制度が期間限定で実施されており、その制度の適用を受ける贈与のことを指しています。
これらに該当する財産は、相続時に贈与財産の加算と税額控除の適用を受けません。
贈与財産の加算と税額控除(生前贈与加算)とは
贈与財産の加算と税額控除とは、相続開始7年以内の贈与は贈与税が控除され、相続税が加算されるという制度です。上記の1~3に該当する財産は、贈与税の対象とならないだけでなく、相続開始前7年以内であっても相続税の対象ともならないということです。
詳細については、「令和5年度税制改正の生前贈与加算と相続時精算課税・暦年贈与の節税方法を解説」を参照してください。
この生前贈与加算については、令和6年1月1日の贈与から、亡くなる前3年以内だったのが7年に延長されました。したがってより早めに贈与を進めておく必要があります。
結婚後の生活費(家具購入費用など)の贈与は非課税?
前述の1にある通り、「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」には贈与税がかかりません。
ここで言う「生活費」とは贈与を受ける人にとって、通常の日常生活に必要な費用のことを言います。
「通常必要と認められるもの」とは、贈与を受けた人(被扶養者)の需要と贈与をした人(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいいます。
なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。
したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合でも、それを預金したり株式や不動産の購入資金に充てている場合には贈与税がかかります。
通常の日常生活に必要な費用に充てるために、社会通念上適当と認められる範囲で、必要な都度贈与される財産には贈与税がかからないということになります。
結婚資金についても、子が親から婚姻後の生活を営むために、家具、寝具、家電製品等の 通常の日常生活を営むのに必要な家具等の贈与を受けた場合、もしくはそれらの購入費用に充てるために金銭の贈与を受け、その全額を家具等の購入費用に充てた場合等には、贈与税の課税対象とならないとされています。
なお、贈与を受けた金銭が預貯金や生活費に充てられなかった部分については、贈与税の課税対象となります。
結婚式・披露宴の費用を親が負担した場合は非課税?
結婚式や披露宴の費用は生活費とは言えませんが、この全部または一部を親が負担した場合はどうでしょうか?
結婚式・披露宴の費用を誰(子(新郎・新婦)、その親(両家))が負担するかは、その結婚式・披露宴の内容、招待客との関係・人数や地域の慣習などによってさまざまですが、それらの事情に応じて、本来費用を負担すべき人それぞれが、その費用を分担している場合には、そもそも贈与には当たらないことから、贈与税の課税対象となりません。
ご祝儀(祝い金)は非課税?
前述の2が関係しますが、個人から受ける結婚祝等の金品は、社交上の必要によるもので贈与をした人と贈与を受けた人との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税の課税対象となりません。
直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税とは
直系尊属とは、父母、祖父母、曽祖父母等を言います。
「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」とは、平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間に、18 歳以上 50 歳未満の人が、結婚・子育て資金に充てるため、直系尊属からの贈与により取得した金銭などの価額のうち1,000 万円まで贈与税の課税価格に算入しないとする制度です。
「結婚・子育て資金の非課税」ともよばれます。ただし結婚資金の非課税額は300万円までです。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税を利用すべきケースはあまりない
結婚・子育て資金の非課税を利用すべきケースは、贈与者の財産が相続税の基礎控除額を超えるほどあって、かつ、親が健在である孫などに対して利用するケースです。
前述の通り、婚姻生活費用を必要な都度贈与する分には、結婚・子育て資金の非課税を利用しなくても贈与税はかかりません。
結婚・子育て資金の非課税の特徴は、一括贈与なのに贈与税がかからない点ですが、実は、この点は、上記のケース(相続税の課税対象となるプラスの遺産があって、かつ、推定相続人ではない孫や曽孫に対して利用するケース)以外では、特にメリットはないのです。
一括贈与と言っても贈与財産は専用口座に入れられ、結局必要な都度でなければ、引き出して使用することはできません。
また、別の目的に使用した分には贈与税が課税されます。そして、贈与者が亡くなった場合の残金は、相続税の課税対象となります。
教育資金の一括贈与の特例との比較
なお、この点、「教育資金の一括贈与の非課税制度」では、贈与者が亡くなっても、相続税の課税対象とならず、引き続き30歳までは非課税で教育資金に利用することができます。
したがって、教育資金贈与の非課税は節税メリットがありますが、結婚・子育て資金の非課税の節税メリットは基本的には無いと言えます。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税のメリット
ただ、前述の通り、親が健在である孫等に対しては、利用するメリットが、わずかばかりながらあるので、この点について説明します。
相続や遺贈(遺言によって財産を与えること)によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫などを含む)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されるという決まりがあります。
しかし、結婚・子育て資金の非課税を利用した贈与した財産の残額を相続する場合は、相続税の2割加算はありません。
それで、親が健在の(=代襲相続人とならない)孫に対して結婚・子育て資金の非課税を利用する場合は、本来2割加算されてしまうところ、加算なしで遺贈できるため、メリットがあると言えます。
相続税の2割加算については「相続税の2割加算の対象になるのは誰?世代飛ばしとどちらがお得?」を参考にしてください。
結婚・子育て資金の非課税制度を利用するには、金融機関との契約が必要
結婚・子育て資金の非課税が適用になるのは、以上の条件に加えて、次のいずれかを当たる場合です。
- 直系尊属と信託会社との間の「結婚・子育て資金管理契約」に基づき信託の受益権を取得した場合
- 直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を「結婚・子育て資金管理契約」に基づき銀行等の営業所等において預貯金として預入をした場合
- 「結婚・子育て資金管理契約」に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等(MRFとMMFを含む)で証券会社の営業所等において有価証券を購入した場合
つまり、信託銀行、銀行、証券会社のいずれかと「結婚・子育て資金管理契約」を結ばないと制度を利用できないということです。手続きの手間がかかりますが、どうしても一括で贈与したい人は検討してもよいでしょう。
取り扱いがある金融機関については、内閣府ホームページ「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置 2.取扱金融機関資料」を参考にしてください。
贈与税には年間110万円の基礎控除がある(暦年控除)
新居の購入費用等、非課税の枠を超えて贈与を行いたい場合、どうすればよいでしょうか?
新居の購入であれば、「住宅取得等資金の非課税」という制度の条件を満たせば一定額まで非課税で行うことができます。
しかし、住宅取得等資金の非課税は、使わない方が節税になるケースもありますし、住宅資金以外でも贈与を受けたいこともあるでしょう。
その点、贈与税には基礎控除があり、年間110万円までであれば非課税で贈与を受けることができます(暦年贈与)。事前にうまく贈与の計画を立てることが重要です。
まとめ
今回は結婚資金の贈与について説明しました。通常の範囲であれば、結婚資金の贈与もご祝儀も非課税ということです。ただし明らかに多すぎる金額は贈与税の対象となる可能性があります。
不明点は、生前贈与と相続に精通した税理士に相談することをおすすめします。
相続費用見積ガイドでは無料で税理士や司法書士などの専門家から一括で見積りを取ることが可能です。是非ご活用ください。
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