遺産分割協議のやり直しをしたい!やり直しができる場合の流れや注意点

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本記事の内容は、遺産相続弁護士ガイドの記事を、相続費用見積ガイドの掲載日(2023年3月20日)時点の法令・制度等に基づき再編集しています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

遺産分割協議を終えた後に「やっぱりやり直したい」「納得できない」と後悔することもあるでしょう。

遺産分割協議は、原則としてやり直しはできません。しかし、協議が無効だったりや相続人の同意が得られた場合など、やり直しが認められるケースもあります。この記事では、遺産分割協議のやり直しができるケース、できないケースについて紹介します。

また遺産分割協議をやり直すときの手順や、注意点についても説明します。是非、参考にしてください。

遺産分割協議のやり直しができる場合は?

遺産分割協議は原則としてやり直しができません。しかし例外として次の2つのケースでは、遺産分割協議のやり直しができます。

  • 無効な遺産分割協議だった場合
  • 相続人全員の同意がある場合

それぞれを詳しく説明していきます。

・無効な遺産分割協議だった場合

既に成立したように思えた遺産分割協議も、次のような場合では無効となります。

  1. 遺言があった場合
  2. 相続人全員の合意がなかった場合

1.遺言があった場合

遺言がある場合には、原則として、その内容に従って遺産を分割します。

遺言があることに気づかず、または、遺言を無視して行われた遺産分割は基本的に無効です。

無効を主張しても、無効な遺産分割協議書をもとに遺産分割を進めようとする相続人がいる場合は、訴訟で無効を主張しなければならないこともあります。

2.相続人全員の合意がなかった場合

相続人全員の合意が欠けている場合も、遺産分割協議は無効となります。合意が欠けているとされる可能性があるケースには、次のようなものがあります。

  1. 実は他にも相続人がいた場合(非嫡出子(認知した婚外子のこと)等)
  2. 遺産分割協議書に勝手に押印された場合
  3. 騙したり、無理強いによって同意させられた場合
  4. 重大な勘違いによって同意してしまった場合
  5. 制限行為能力者が単独で協議に応じた場合

4及び5について、説明します。

「重大な勘違いによって同意してしまった場合」

勘違いによって同意してしまった場合に無効を主張できるかは、ケースによります。

また、相続放棄を遺産分割前にしなかった理由が、相続債務が存在しないか少額にすぎないものと誤信したためであり、かつ、そのように信じたことへの相当な理由がある場合は、遺産分割協議を無効として相続放棄ができる場合があります。

「制限行為能力者が単独で協議に応じた場合」

制限行為能力者とは、認知症や、経験に乏しいなどの理由から、自らの意思に基づいて判断ができない、もしくは法律行為をすることができない者を言います。 具体的には、次の4つに分けられます。

  • 未成年者
  • 成年被後見人
  • 被保佐人
  • 被補助人

制限行為能力者が単独で遺産分割協議に応じた場合、取り消すことができます。

・相続人全員の同意がある場合もやり直しができる

しかし、有効な遺産分割協議であっても、相続人全員の同意があればやり直すことができます。

相続人の中に死亡した人がいる場合でも、その死亡した相続人の相続人が全員同意すれば、やり直しできます。

やり直す場合は、新たに遺産分割協議書を作成し、前の協議書は破棄します。

既に前の遺産分割協議の内容に沿った登記をしている場合でも、問題なくやり直すことができます。その場合は、新たに協議した内容に沿って、改めて登記し直します。

遺産分割協議成立後に他の遺産がみつかったらやり直しできる?

遺産分割協議成立後に他に遺産があることが分かった場合、原則として、協議自体はそのまま有効で、新たに見つかった遺産についてのみ、遺産分割協議を行います。

ただし相続人全員の同意があれば、すべての遺産について協議をやり直すことができます。

なお、遺産分割協議書に「本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、甲が全て相続する。」というような定めがある場合は、基本的には、新たに見つかった遺産については遺産分割協議を行わずに協議書の定めに従います。

ただし、新たに見つかった遺産の価額があまりに大きい場合は、協議書の定めにかかわらず、その遺産については、分割協議をすることが認められることがあります。

遺産分割協議をやり直すときの流れ

遺産分割協議をやり直すときは、一般的に以下の手順で進めることになります。

  1. 相続人全員を集めて、話し合いの場を設ける
  2. 必要書類を集めて遺産分割協議書を作成する
  3. 贈与税や譲渡所得税などの税金を算出する
  4. マンションなどの所有者を変更する場合は、不動産登記を行う

1.相続人全員を集めて、話し合いの場を設ける

遺産分割協議をやり直す場合、相続人全員の同意が必要になるため、全員が集まれる場を設ける必要があります。

この再協議のときに相続人の誰かが死亡している場合、死亡した人の相続人全員も参加が必要です。

ただし相続人全員の同意があっても、すでに遺産分割で確定した相続財産を第三者に明け渡した場合、第三者の権利は保護されます。

もし相続人全員の同意が得られない場合、訴訟手続きを行い解決を目指すことになります。

2.必要書類を集めて遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議のやり直しに必要な書類は、基本的に最初の遺産分割協議と同じです。

  • 遺産分割協議書
  • 相続手続き依頼書
  • 相続同意書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人の住民票
  • 被相続人の住民票または除かれた戸籍の附票
  • 相続登記申請書
  • 車検証
  • 車庫証明書
  • 株式名義書換請求書などの書類

財産の種類によって必要になる書類は異なることがあります。追加で必要な書類はあるか、再度使用できるものはあるかなどは、専門家に相談することをおすすめします。

3.贈与税や譲渡所得税などの税金を算出する

遺産分割協議のやり直しによって新たな財産の移転があった場合、贈与税や譲渡所得税などが課される可能性があります。

新たに無償で財産を取得した場合は贈与税対価を払った場合は譲渡所得税が対象となります。

また、相続財産に不動産があり名義変更を行う場合は、不動産所得税と登録免許税がかかります。

4.マンションなどの所有者を変更する場合は、不動産登記を行う

遺産分割協議をやり直したことで不動産の所有者が変わる場合、不動産登記(不動産の名義変更)が必要になります。

既に当初の遺産分割協議をもとに不動産登記が行われてしまった場合は、「合意解除を原因とする所有権抹消登記」の手続きを行います。

「合意解除を原因とする所有権抹消登記」が終わると、再協議の内容で「相続」を原因とする所有権移転登記を行います。

遺産分割協議をやり直すときの注意点

登記をやり直す場合の注意点としては、不動産所得税と登録免許税が余計にかかってしまうことです。

遺産分割のやり直しによって財産の移転が生じると、贈与や譲渡とみなされて、贈与税や譲渡所得税が課される可能性があります。

特に、相続税の申告期限後にやり直しをすると、そのようにみなされる可能性が高まると考えられます。

やり直しを検討する場合は、贈与税や譲渡所得税がかからないかどうか、事前に税理士等の専門家に相談することをおすすめします。また不動産の名義変更が必要な場合は、必要な書類を揃えて手続きを行わなければいけません。不動産登記は令和6年4月1日より義務化されることが決定されているので、速やかに行うようにしましょう。

なお、協議ではなく調停や審判で決定した遺産分割については、相続人全員の同意があっても、原則としてやり直すことはできません。

遺産分割協議のやり直しに時効や期限はない

相続人全員の同意があって遺産分割協議をやり直す場合、その時効や期限はありません。何年後でもやり直すことができます。

財産を既に譲渡している場合は、価格賠償することになります。なぜなら本来は共有すべき財産を独断で処分したとみなされるからです。

一方、詐欺や強迫(無理強い)があったことを主張してやり直しを求める場合は、主張できる期間が決まっています。

騙されていたことを知った時や強迫が止んだ時から5年、または、遺産分割協議が成立した時から20年が経過すると、やり直しを求めることができなくなります。

まとめ

遺産分割協議書は亡くなった方の財産を相続人に分けたことを記す大切な書類です。

行政書士などの専門家に作成を依頼することができます。

まずは費用が気になるという方は、相続費用見積ガイドで見積りをとってみませんか?複数の専門家から無料で見積りを取ることができますので、是非活用してください。

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