検認とは遺言書の存在を証明すること|制度や手続き方法をわかりやすく全解説

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本記事の内容は、原則、記事執筆日(2023年6月7日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

亡くなった方の遺言書(いごんしょ)が出てきた場合、どうすればいいかご存じですか?

検認とは遺言書に対して必要となる手続きのひとつで、裁判所に遺言書を提出して内容の確認をおこないます。

この記事では、検認の目的や手続き方法とあわせて遺言書の取り扱い方法などをくわしくご紹介します。

大切な方が亡くなり遺言書があったときに慌てないよう、検認についてあらかじめ知っておきましょう。

遺言書の検認とは

家庭裁判所で検認の手続きをすることで、遺言書の存在を確認し、検認の日における遺言書の形状や加除訂正の状態、日付や署名などの内容を明確にして、偽造・変造がないことを証明してもらうことができます。証拠保全の手続きであり、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

どうして検認するの?

遺言書は民法で書式が明確に決まっています。

内容は財産を誰にどう分割するかなどが書かれているのが一般的でしょう。

亡くなった人が所有していた財産は、法律により相続割合が決まっていますが、遺言書がある場合は遺言書の内容を優先するのが基本です。つまり故人以外の誰かが遺言書の内容を意図的に書き換えてしまったら、遺言書が正しく機能しません。

そこで、検認をおこなって遺言書の存在を家庭裁判所に確認してもらい遺言内容を公にする手続きが必要となるのです。

遺言書の検認と遺言書の効果は無関係

検認は、あくまでも遺言書の存在を確認し証明することだけが目的です。

つまり「遺言の内容が有効か無効か」「遺言書の内容どおりに相続することを決定する」といった判断はおこないません。

遺言書の検認は、家庭裁判所でおこなう手続きですが、相続人の出席は必須ではありません。

具体的な相続は別の機会に決定するため、遺言書を検認する際は、相続人はもちろん相続人の代理人として弁護士の立会いも認められています。

検認をおこなうタイミング

遺言書の検認をおこなうタイミングには、具体的な決まりがなく「遺言者の死亡を知った後、遅滞なく」という表現にとどまっています。

ただし、相続人や相続内容は遺言書の中身を確認してはじめて決定できるものです。また、故人が所有していた不動産の名義を変える相続登記や預貯金の解約などの手続きのためには、事前に遺言書の検認をすませておく必要があります。さらに相続放棄をする場合には、故人の死後3カ月以内に相続放棄の手続きが必要です。そこで、遺言書の検認は、できるだけ早めにおこなう必要があります。

検認が必要な遺言書の種類

遺言書には主に自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの種類があります。しかし、全ての種類の遺言書について検認が必要なわけではありません。種類ごとの検認の要否をご紹介します。

自筆証書遺言は検認が必要

自宅から見つかる遺言書のほとんどが自筆証書遺言で、検認が必要です。自筆証書遺言は、遺言者だけで作成できる遺言書であり、自筆で遺言を書いて署名押印したものが正式です。生前に親交のあった人に預けている場合や、仏壇や神棚、机の引き出し、金庫などから見つかる場合もあります。

後から遺言書が見つかるとせっかく相続の分配が決まりかけていてもやりなおしになる可能性が。「遺言書はない」と決めつけず、まず探してみることが大切です。

自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書は検認が不要

自筆証書遺言書保管制度は、2020年から始まった制度です。遺言書を法務局の遺言書保管所に預けるため、家庭裁判所の検認の手続きが不要になります。

他にも、遺言者が希望すれば、遺言者が死亡した場合に、本人があらかじめ指定していた推定相続人などに遺言書の証明書を発送するなどの通知する制度(指定者通知)や、遺言者死亡後、関係相続人等が遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けたとき全ての関係相続人等に遺言書が遺言書保管所に保管されていることをお知らせする制度(関係遺言書保管通知)もあります。

なお、遺言書の原本は死後50年、スキャナなどで画像データにした遺言書のコピーは死後150年保存されます。

公正証書遺言は検認が不要

公正証書遺言の場合は検認が必要ありません。公正証書遺言は、公証役場の公証人が遺言を残したい人から遺言内容を確認して遺言書を作成します。

遺言書の作成に法律の専門家が携わり、作成された遺言書は公証役場に保管されるため不備や紛失のリスクがありません。もし遺言書に不備があると遺言自体が無効になるため、公正証書遺言の場合は、遺言を確実に実行できるメリットがあります。

秘密証書遺言は検認が必要

あまり作られることはありませんが、秘密証書遺言も自分ひとりで作成できる遺言書であり、相続を開始する前に検認が必要です。

秘密証書遺言は、生前に自分から公証役場に出向き「この封筒の中身が自分の遺言書である」ことを証明してもらいます。遺言書自体は封印されていて、公証役場で中身の確認はおこないません。つまり遺言内容は本人以外に秘密にされています。

遺言書の検認を申し立てる方法

ここでは手元に遺言書があり、検認が必要となった場合の手続き方法をご紹介します。

検認にかかる期間

検認を申し立ててから検認が完了するまでの期間は、おおよそ1~2か月とされています。なお、検認待ちでも相続の手続き自体は中断されません。相続の手続きは「今、検認を申し立てていて順番を待っている」と言っても、検認待ちの事情は考慮されず、法律どおりの期日までに対応しなければなりません。

検認の申し立てができる人

検認をしてほしいと家庭裁判所に申し立てできる人は、遺言書の保管者か遺言書を発見した相続人です。また、弁護士や司法書士などに検認手続きを依頼できます。

家庭裁判所で検認を確認しないと相続の権利がなくなるという性質の手続きではないため、申し立ての本人であっても無理に検認に立ちあう必要はありません

申立先

検認を申し立てるのは、「遺言者の最後の住所地の家庭裁判所」です。つまり亡くなった方の住民票が最後にどこにあったかにより申し立てる場所が変わります。特に介護施設に入所していた場合は、住民票を変更している可能性があります。申し立て先は長らく住んだ住所地の所轄裁判所とは限らないため注意が必要です。

申し立てに必要な費用

検認を申し立てる際は以下の費用がかかります。

  • 申請費用:遺言書1通につき収入印紙800円分
  • 相続人に検認結果を通知するための切手代
  • 戸籍類の取得費用
  • 検認済証明書の交付費用(検認完了後):収入印紙150円分
  • 委託費用(専門家に申し立てを依頼する場合)

申し立てに必要な書類

申し立てには、申立書と相続に関連する人全員の戸籍謄本が必要です。

ケースにより提出すべき内容が異なります。 必ず必要なのは以下の書類です。

  • 検認申立書
  • 遺言者の生まれてから死ぬまでの戸籍謄本(戸籍等の全部事項証明書)
  • 相続者全員の戸籍謄本
  • (遺言書が開封されている場合)遺言書の写し
  • (遺言者の子や代襲者で死亡している人がいる場合)遺言者の子(及びその代襲者)の生まれてから死ぬまでの戸籍謄本

遺言者の配偶者は必ず相続人となりますが、そのほか遺言者の子、遺言者の父母、遺言者の兄弟姉妹が相続人になる場合があります。

また相続人が亡くなっている場合には亡くなったことを示す戸籍謄本と代襲者として相続人の子どもの戸籍謄本も必要です。

検認の流れ

検認の申し立てを行い、検認を受けるまでの流れをご紹介します。

遺言書検認の申し立て

前述の資料一式を所轄の家庭裁判所へ持参または郵送します。郵送の場合は、念のため書留や配達記録郵便を使うと安心です。

検認期日通知書の受領

相続人全員に対して「検認期日通知書」と「出欠回答書」が届きます。

申し立てから通知書を受け取るまでの期間は、早ければ1週間ほどで、1か月ほどかかる場合もあります。

「検認期日通知書」には実際に検認をおこなう日が記載されていて、裁判所から電話がかかってくる場合もあります。

検認当日

検認の当日の持ちものは、以下のとおりです。

  • 遺言書
  • 検認済証明書の取得用:収入証紙150円分、申立人の印鑑
  • その他裁判所から指示されたもの

検認では、遺言書を開封して申立人や代理人、出頭した相続人(欠席可)、裁判所書記官とで以下の確認をおこないます。

  • 遺言書の筆跡が遺言者のものかどうか
  • 遺言書内容を確認

検認の所用時間は5~10分ほどのことが多いです。

検認済証明書の交付と遺言書の返却

検認が終わると、家庭裁判所から検認済みの証明がついた状態で遺言書が返還されます。

また、検認立ち会っていない相続人には「検認調書」が通知されます。遺言書が検認済みになると、実際に遺言が執行可能です。  

遺言書の検認における注意点

遺言書の取り扱いにはいくつか気を付けるべきことがあります。検認の目的に立ちかえり整理しておきましょう。

無断で開封しない

遺言書を見つけた場合、内容が気になるのですぐに開けたくなりますが、法律上は検認よりも前に遺言書を勝手に開けると罰金(5万円以下の過料)が発生します。

法律で開封を禁止しているのは、遺言の内容の改変を避けるためです。悪質でないと判断されれば罰金が発生しないこともありますが、他の相続人から疑惑の目を向けられる可能性もありますので、無断で開けないように気をつけましょう。

万が一開封してしまった場合にはごまかしたりせずに、直ちに検認手続きを行いましょう。

遺言書を隠さない

遺言者の遺志を守るために、遺言書の秘匿は厳しく取り扱われています。もし遺言書を保管していた人が、遺言書を故意に隠したり破棄したり偽造したりすると、相続する資格を失う可能性があります。遺言書かどうかはっきりしないものについても、うやむやにせず検認に出しておくと安心です。

遺言書に不服がある場合の対応

検認では遺言書の内容を確認し、遺言の内容が公にする行為です。

また、遺言書の内容は法律に定められた相続のルールよりも優先されます。 遺言をめぐるトラブルはさまざまなものがあります。

  • 相続人が遺言書を開封してしまった
  • 遺産の分割協議が済んだあとに遺言書が出てきた
  • 故人に隠し子がいた
  • 遺言書に明示された財産が実際にはない

もしも相続人が「その遺言の内容では納得できない」と感じた場合には、法律上の手続きを踏んで対応が検討できます。

家事調停

遺言の内容を無効だと感じている場合には、家庭裁判所に当事者である相続人同士で話しあいをする「家事調停」を申し立てできます。

家事調停では、以下のような観点で遺言書の有効性について争われます。

  • 書類の不備
  • 遺言の偽造が疑われる
  • 遺言を残すための判断能力が十分になかった疑いがある

様式不備の遺言書は、法律上では無効です。また、遺言書の日付の時点で遺言者が重度の認知症などで十分な判断能力がないと考えられる場合や入院中で遺言が書けなかったと推定できる場合にも調停をおこなう場合があります。

遺言無効確認請求訴訟

家事調停で話し合いがうまくまとまらなかった場合や、そもそも当事者同士で話しあいができない場合には、地方裁判所に「遺言無効確認請求訴訟」を提起できます。

この訴訟では遺言書が作成されたときの本人の遺言能力や偽造の可能性について、生前の事実や筆跡鑑定によって慎重に判断します。

遺言の無効が認められるケース

以下のようなケースは遺言が無効になるのが一般的です。

  • 遺言書の書類上の誤り(自筆ではない、日付がない、署名押印がない、訂正方法が正しくない)
  • 遺言の内容が不明確
  • 遺言が故人以外の人間との共同名義
  • 遺言作成時に遺言能力がなかった

自筆証書遺言の場合には、書類自体の不備により無効となるケースも少なくありません。ご自身で作成する場合には、遺言書の有効性を損なわぬようお気をつけください。

まとめ

自筆証書遺言書保管制度が始まったものの、まだ遺言書の検認が必要な場合も多くみられます。

自宅で遺言書を見つけた場合は、まず検認で内容を証明してもらい相続手続きを円滑に進めましょう。

検認に使う戸籍謄本の収集などは専門家にまかせることができます。是非無料の見積りをとって検討してみてください。

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