相続登記しなくても固定資産税は払う!
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不動産を相続すると、毎年固定資産税を支払わなければなりません。いっそ「相続登記しなければ固定資産税を払わなくて良いのでは?」と思う方がいらっしゃるかもしれません。本当に払わずに済むしょうか?
この記事では、相続時にかかる固定資産税について詳しく解説するとともに、相続登記をしなかったときのデメリットについても解説していきます。
相続登記しなくても固定資産税を払うことになる
結論から言うと、相続登記をしなくても固定資産税は払うことになります。
相続開始の年やそれ以前の固定資産税の未納分については、相続人(相続放棄をした人は除く)全員の連帯債務となります。
遺産から払って構いません。
遺産があまりなく遺産から払えない場合は、各自相続分に応じて負担し、代表者が払うのがよいでしょう。
相続開始の年の翌年以降の分については、相続登記をした場合は登記名義人が払わなければなりませんが、相続登記をしない場合は相続人(相続放棄をした人を除く)全員の連帯債務となります。
不動産を相続した人でない人が払った場合は、不動産を相続した人に求償できます。
なお、相続登記をしなければ、誰が相続したか役所にはわかりませんから、相続人代表者に固定資産税・都市計画税の納税通知書が送られます。
相続人代表者は、相続人代表者指定届を提出した場合は届で指定された相続人で、提出していない場合は役所が勝手に指定します(届の名称は役所によって異なります)。
不動産を相続していない人に納税通知書が届くと、転送してもらったり等の手間が生じますし、納税漏れのリスクもありますから、相続登記をしない場合は、せめて相続人代表者変更届を提出し、不動産を相続した人に届くようにした方がよいでしょう(届の名称は役所によって異なります)。
相続登記をしないと登録免許税と登記費用を節約できる?
相続登記をしないと節約できるのは、固定資産税ではなく、登録免許税、必要経費(申請に必要な書類の交付手数料)、司法書士報酬です。
相続登記しないデメリット
相続登記をしないでいると、次の4つのリスクがあります。
- 他の相続人の持分を差し押さえられたり、売却されたりするおそれがある
- 不動産の売却・担保設定ができない
- 権利関係が複雑になる
- 次の相続時に2倍の費用がかかる可能性がある
以下、それぞれについて説明します。
1.他の相続人の持分を差し押さえられたり、売却されたりするおそれがある
相続登記をしていなければ、他の相続人の債権者等から家を差し押さえられるおそれがあります。
家などの相続財産は、遺産分割が済むまでは、すべての相続人が相続分に応じて共有している状態です。
遺産分割協議で誰がどの財産を取得するかを決めて遺産分割を行うと、協議で決まった相続人がその財産を取得することになります。
しかし、家を取得した相続人は、登記しなければ、その家についての権利を第三者に対して主張することはできません。
登記を行っていない状態は、第三者から見れば、まだ遺産分割が済んでいない共有状態になるのです。
ですので、他の相続人の債権者は、その相続人が債務を弁済しない場合は、相続財産についてのその相続人の持分を差し押さえることができることがあるのです。
また、他の相続人に債務がある場合だけでなく、他の相続人が勝手に共有登記をして共有持分を売却することもできてしまいます。
そうすると、どちらにせよ、見ず知らずの人と不動産を共有している状態になってしまいます。
この状態を解消して不動産を単独で所有するには、共有持分を買い取ることになるでしょう。
共有持分の買い取りに要した費用は、債務者であった相続人に求償することができますが、差し押さえを受けるくらいなので、求償に応じる程の資力がなく、回収することは難しいでしょう。
このように、相続登記をしていないと、余計な出費がかかるおそれがあります。
2.不動産の売却・担保設定ができない
登記をしていないと、相続した家を売却したり、家に担保権を設定したりすることができません。
それでは、売却したり、担保権を設定したりする時に、登記をすればよいではないかと思われるかもしれませんが、それは、お勧めできません。
その理由は2つあります。ひとつは、前述の通り、その間に家を差し押さえられるおそれがあるからで、もうひとつは、登記をしようと思った時には、権利関係が複雑化して、相続登記をすることが大変になっていることがあるからです。
3.権利関係が複雑になる
登記をしようと思った時には、権利関係が複雑化して、登記をすることが大変になっていることがあるとはどういうことでしょうか?
例えば、被相続人(亡くなった人)の妻Aと被相続人の姪Bが共同相続人のケースで、遺産分割協議で家をAが取得することになったとします。
しかし、遺産分割協議書を作成せず、Aが登記を行わずにいたところ、Bが亡くなり、Bの夫Cが財産を相続したとします。
その後、Cも亡くなり、Cの甥姪D、E、F、G、H、I、J、Kの7人がCの財産を相続したとします。
その後、Aは家を売却するために、登記を行おうとしても、そのためには、被相続人の姪の夫の甥・姪という見ず知らずのD~Kの7人の同意が必要になります。
その7人が気の良い人たちであれば、同意してくれるかもしれませんが、お金に困っていたりすると、同意に応じる代償としてのハンコ代を求めたり、共有持分の買い取りを請求することも考えられます。
4.次の相続時に2倍の費用がかかる可能性がある
相続登記をしないと、その人が登記費用を節約できても、その人の相続人が、その人の分まで登記費用を負担しなければならない可能性があります。
どういうことかというと、例えば、不動産の所有者が亡くなって(一次相続)、相続人がその不動産について登記をしないまま亡くなったとします(二次相続)。
二次相続の相続人が登記をする場合には、一次相続の登記と二次相続の登記の2回分の登記をしなければならず、倍の費用がかかってしまうのです。
したがって、費用の節約のために登記をしないということは、次の世代に自分の分の登記費用を押し付けているという言い方もできます。
なお、2018年4月1日から、2021年3月31日までの時限措置として、一代前の相続登記にかかる登録免許税を免税にする特例がスタートしていますので、当該措置の適用が受けられれば、必ずしも2倍の費用がかかるというデメリットが当てはまらない場合もあります。
相続登記は義務化される
2021年4月21日、所有者不明土地問題に関する改正不動産登記法などの関連法案が可決し相続登記の義務化が決定しました。
相続登記の義務化が決定されたことにより、一定の期間内に手続きをしなかった場合など、以下の過料が科されることになりました。
相続等により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由がないのに申請を怠ったとき、10万円以下の過料の対象となります。
また義務化自体は令和6年4月1日から施行ですが、過去の相続についても適用されます。
本記事の内容は、原則、記事執筆日(2023年2月13日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
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