共有名義の不動産を相続する前に注意しておきたいことと手続きの流れ

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本記事の内容は、原則、記事執筆日(2023年2月9日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
共有名義の不動産を相続する前に注意しておきたいことと手続きの流れ

代々相続してきた不動産や夫婦で購入した不動産など、名義人が複数人の共有名義であることも多いものです。

不動産の相続は手続きが煩雑です。共有名義の場合は相続手続きが複雑になり、揉めごとに発展してしまうケースは珍しくありません。この記事では、共有名義の不動産を相続するにあたって注意すべき点や、不動産の相続手続きの方法をご紹介します。

不動産の共有名義とは

不動産の共有名義とは、1つの不動産に対して所有権を持つ名義人が複数いる状態をいいます。

それぞれの名義人が、名義を共有している土地や不動産に対して持分に応じた権利を持っています。

そのため、売却などの処分や賃貸をしたいときは他の共有名義人の合意が必要です。

不動産の名義を変えたいときはどうすればいい?

不動産の所在地を管轄する法務局で所有権移転登記をおこないます。

所有権移転登記は土地や建物の所有権が移ったときに所有権を明確にするために行う登記です。

不動産を売却したときや、贈与や相続などで所有者が変わったときにおこないます。

所有権移転登記のうち、相続する不動産の名義変更のためにおこなう登記を相続登記といいます。

共有名義の不動産の相続での注意点

相続する不動産が共有名義だった場合、どんな問題が起こるでしょうか。

被相続人の共有分を相続人で分割して共有する場合の問題点

被相続人が持っていた不動産が第三者との共有だった場合、被相続人の持分を相続する相続人の間でなかなか話し合いがまとまらず、ひとまず相続人全員の共有にしてしまう場合です。

共有持分が細かくなっていくほど権利関係が複雑になり登記が放置されかねません。

令和6年から相続登記は義務化されます。放置するとペナルティが課せられますので注意が必要です。相続登記の義務化については「【令和6年4月1日から施行】相続登記の義務化が決定!違反の場合は過料も」で詳しく説明しています。

また、共有名義人が多いとそのうちの一人が勝手に売却をしてしまうなどしてトラブルになる場合もあります。

一部の相続人が不動産を相続する場合の問題点

被相続人と相続人のうちのひとりが2世帯住宅で同居していた場合、相続が発生したとき同居していた相続人が、当然自分が被相続人の持分を相続すると言い出した場合です。

同居をしていない子どもにも法定相続分の権利があります。

不動産を相続する相続人は同居をしていない子どもに対して、法定相続分に応じた金銭を支払う必要があります。これを代償分割といいます。代償分割についての詳細は、「代償分割のメリット・デメリット|相続税・贈与税・譲渡所得税はどうなる?」を参照してください。

金銭的な問題以外には、不動産の評価額の算定方法や、固定資産税の負担などに関する議論も必要になります。

相続では相続人全員の同意が必要になるため、相続人が増えれば増えるほど難易度は上がります。

遺産分割の話し合いは口約束で済ますことを避け、しっかりと遺産分割協議書を作って後日のトラブルを防止しましょう。

共有名義不動産の相続の手続きと流れ・注意点

換価分割のメリット・デメリット

それでは、共有名義の不動産を相続する際の手続きと流れについて説明していきます。

5つの段階に分けて順に説明します。

①相続人の確定

相続が発生したら、最初に確認しなければならないのが相続人の確定です。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を、新しいものから古いものへと遡って取り寄せる必要があります。現在の戸籍を請求する際に、役所にその前の戸籍の場所を確認すれば教えてもらえます。

戸籍の請求は本人の本籍地以外では行えませんが、転居や転籍などで元の本籍地が遠方の場合には、元の本籍地の市区町村役場に郵送で請求することもできます。婚姻や転籍の回数が多いとその分取り寄せる戸籍は多くなり、日数もかかります。

ここで注意したいのが、戸籍を確認してみたら元妻の子や、養子、婚外子など相続人が知らなかった相続人が見つかる可能性があるということです。その場合は相続人が増え、相続が複雑になることも予想されます。

相続人の確定は早急に行う必要があり、特に想定外の相続人が見つかった場合などには、専門家にお願いするのがおすすめです。

②遺言書を確認

相続人を確定させるのと同時進行で行わなくてはならないのが、遺言書の確認です。公正証書で作成している場合は公証人役場で確認ができます。ここで注意したいのが、自筆の遺言書が見つかった場合です。決して開封せず、家庭裁判所に持参し検認してもらう必要があります。

特に、共有名義の不動産を所有し子どもがいない夫婦の場合、遺言書があるのとないのでは大きく状況が異なってきます。例えば「配偶者に全財産を相続させる」という遺言が残されていれば、相続人である兄弟や甥・姪には遺留分が認められていないため、トラブルを避けることができます。

ですが、第2相続人である両親には遺留分が認められていますので、遺言書があっても両親の求めがあれば遺留分相当の金額を支払わなくてはなりません。

③遺産を確認

遺言書の確認ともに、どのような財産が遺されているのか遺産の確認を行いましょう。
預貯金、現金や株式などを確認し、不動産の名義を確認しておく必要があります。また、山林などを持っている可能性がある場合は、役所で名寄せを行い、所有している不動産を確認してもらわなくてはなりません。

④遺産分割協議

相続人と遺産内容が確定したら、どのように遺産を分けるか遺産分割協議を行います。遺言があれば遺言書に基づいて遺産の分割を行い、遺言書がない場合には相続人で遺産をどう分けるか相談します。相続人全員が合意したら、遺産分割協議書を作成し相続人全員の署名と押印をします。

相続した不動産の名義を変更する場合は、各相続人の戸籍謄本と住民票、印鑑証明書が必要です。印鑑登録には時間がかかる場合もありますので、相続が発生することが分かった時点で印鑑登録を済ませておくことをおすすめします。

なお、不動産の分割方法は「換価分割・代償分割・現物分割・共有分割」などがあります。くわしくは「相続した不動産の分け方は?名義変更手続きの相続登記は自分でできる?」をご参照ください。

遺産分割協議がうまくいかなかった場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。相続人全員からがどのような分割方法を希望しているかを聞き、必要があれば資料等の提出や不動産の鑑定を行います。その上で解決案の提示や助言の元で、合意を目指した話し合いを進めていきます。

話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始されます。裁判官による審判手続で必要な審理が行われた上、審判で結論を示されることになります。

遺産分割調停では相手と直接顔を合わせる必要がなく、調停委員が間に入って話し合いを進めてくれます。合意までの期間は早い場合で3ヶ月ほど、長引く場合には数年続くこともあります。

⑤相続財産の名義変更

遺産分割協議が終わったら、相続した不動産の名義変更を行います。実家の家や土地を相続する場合には相続登記が必要です。

相続登記の際には戸籍謄本や住民票、相続する不動産の固定資産税評価証明書などが必要となります。また、遺産分割協議が行われた場合には、遺産分割協議書と法定相続人の印鑑証明書も必要です。

状況によって必要な書類は違いますので注意しましょう。

相続登記のしかたは「相続登記は法務局で!管轄の調べ方や必要書類、申請書の書き方まで」で詳しく説明しています。

まとめ

共有名義の不動産を相続する際には、戸籍を確認し相続人を確認することから始まります。不動産の相続は分け合って相続することは難しく、共有名義となれば相続人が多くなり、結論がまとまりにくいのが実情です。

せっかく無事に合意してほっとしたまま、不動産の名義をそのままにしてしまうとまた違ったトラブルが起こりかねません。登記について専門家に依頼したい場合は、是非見積りを取ってみましょう。

本記事の内容は、原則、記事執筆日(2023年2月9日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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