借金の遺産分割での分け方は?どんな割合にしてもいいの?
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亡くなった親に借金があった場合、もらう現預金などの財産の金額より大きくなってしまい、そのまま相続してしまうと相続人の生活にも負担がかかることもあり得ます。
借金を相続するときはどのように相続人の間で分けるのでしょうか。また分け方にきまりはあるのでしょうか。
借金も相続財産なのはなぜ?
相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利・義務を承継するとされています。
不動産や現金、預貯金などのプラス財産、いわゆる「権利」を承継することは当然のことですが、法律には「義務」も承継すると定められています。
この義務の代表格が、借金などの債務です。
仮に相続開始の時点で借金などのマイナス財産は承継せず、プラス財産のみを承継することができることを相続人に認めてしまうと、被相続人に対してお金を貸している債権者などに不測の損害を与えてしまうために「義務」も相続するのです。
借金の分け方は法定相続割合で分割される
原則として相続人は法定相続分(民法上一定の範囲の親族に決められた相続分)に応じて債務を承継することになります。
例えば、夫が死亡して相続人が妻と長男、長女の場合は、妻の法定相続分が2分の1、長男と長女の法定相続分がそれぞれ4分の1となります。
相続人 | 法定相続分 | |
---|---|---|
配偶者+子 | 配偶者:1/2 | 子:1/2 |
配偶者+親 | 配偶者:2/3 | 親:1/3 |
配偶者+兄弟姉妹 | 配偶者:3/4 | 兄弟姉妹:1/4 |
配偶者のみ | 配偶者:全部 | |
子のみ | 子:全部 | |
親のみ | 親:全部 | |
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹:全部 |
例えば、死亡した夫に100万円の借金があった場合、債権者は妻に対しては50万円、長男と長女に対しては、それぞれ25万円の請求をすることができます。
請求された相続人は全額ではなく、自己の法定相続分のみの額を支払う義務が発生するのです。
借金は遺産分割協議の対象にならない?!
では、法定相続分でない割合で借金を分けたいときはどうすればいいのでしょうか。「遺産分割協議で話し合って変えればいいんでしょ?」と思う方もいるでしょう。
実は過去の判例により、借金は、相続開始とともにすでに法定相続分で各相続人に割り当てられて継承されているものされています。そのため遺産分割の対象にはならないのです。
これは、消極財産(マイナスの財産)である借金は遺産分割で法定相続分以外の割合で分けられてしまうと、債権者にとっては不利益が生じるおそれがあるからとされています。
そのため、借金を相続した相続人のあいだで遺産分割協議がおこなわれて借金の相続を法定相続分とは違う割合で分けたとしても、それは相続人のあいだだけのことであり債権者には関係がなく、債権者は法定相続割合で各相続人に請求することができます。
だからといって遺産分割協議書に借金を記載するのが無駄ということはありません。あとで、相続人の間でトラブルにならないよう、合意した内容をきちんと記載しておきましょう。
「積極財産(プラスの財産)」と「消極財産(マイナスの財産)」とは?
承継する財産のうち、経済的な価値のあるプラスの財産を「積極財産」と呼びます。
具体的には「預貯金・有価証券・金融商品(資産)」「車・宝石・貴金属・美術品(動産)」「土地・建物(不動産)」など。貸付金や売掛金などの債権をはじめ、ちょっと特殊なところでは著作権や特許権、意匠権や商標権といった権利関係も含まれます。
反対に相続することでマイナスとなる財産が「消極財産」です。例としては「金融機関からの借金・住宅ローン(負債)」と「未払いの家賃・所得税・住民税(未払金)」などが挙げられます。
借金の相続割合を変える方法はある?
法定相続分とは違う割合で借金を負担したいということを債権者が了承すれば変えられます。債権者と話し合いをしてみましょう。
借金をひとつにまとめるということであれば債権者の合意がとれるケースがあります。
支払いができる相続人に借金がまとまることで債権者にとっても事務的なコストも減り回収ができなくなるリスクが減るというメリットがあるからです。
相続人のひとりが借金を払うということになった場合や第三者に引き受けてもらうことになった場合には「免責的債務引受(めんせきてきさいむひきうけ)」または、「併存的債務引受(へいぞんてきさいむひきうけ)」を債権者に申し入れます。
免責的債務引受
免責債務引受とは債務の「引受人」が、「債務者」が「債権者」に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担して、債務を引き受けることを言います。
免責債務引受によって債務者は自己の債務を免れますので、債権者は旧債務者である相続人に債務の履行を求めることはできなくなります。
免責的債務引受をする際は、内容を当事者間で確認し、また、後々のトラブルを予防するために、契約書を作成しておきます。
併存的債務引受
併存的債務引受とは「引受人」が新たに同一内容の債務を負担するものの、「債務者」も依然として債務を負担し、債務者と引受人が連帯債務関係に入る債務引受です。
併存的債務引受によって債務者は引受後も債務を免れることはできませんので、債権者は旧債務者である相続人に債務の履行を求めることができます。
併存的債務引受をする際は、内容を当事者間で確認し、また、後々のトラブルを予防するために、契約書を作成しておきます。
借金を相続しない場合の方法は?
借金などの財産が超過している場合は相続を回避したり負担限度を決める方法として相続放棄や限定承認という方法を選択することができます。
相続放棄
相続放棄は、最初から相続人ではなかったことにする手続きです。
単に「自分は財産を放棄します」と主張するだけでは足りず、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることが必要です。
相続放棄の手続き自体はさほど困難ではありませんが、申立期間が、原則「相続人が被相続人の死亡の事実を知った時から3ヶ月以内」と規定されていますので注意が必要です。
この3ヶ月の期間以内に、被相続人の残したプラス財産とマイナス財産を調査し、借金のみが残されている場合、あるいは借金などのマイナス財産がプラス財産を著しく超過している場合などは、速やかに相続放棄の申立を行う必要があります。
相続放棄の手続き方法は、相続放棄手続きを自分でする方法、書類の準備から手続き内容、費用、期間など。相続放棄が認められない場合は?を参照してください。
相続人全員が相続放棄してもいいのか?
全員が相続放棄することはできます。
この場合、相続人不存在となり、相続財産管理人が放棄された財産の管理をおこないます。
相続財産管理人が選任されるまでの期間は相続人に財産の管理をする義務があるため、それにかかる費用と、相続財産管理人の申し立てにかかる費用は、相続放棄をしても負担する必要があります。
限定承認
限定承認とは、相続財産のうち相続したプラスの財産の限度において、被相続人の借金などのマイナスの財産を相続することをいいます。申立期間は、原則「相続人が被相続人の死亡の事実を知った時から3ヶ月以内」です。
プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかわからない場合やマイナスの財産の方が多い場合に有効な手段で一見便利な制度と思えます。
しかし、定まった期限内に相続人全員で申述手続きをしなければいけない、申述後に相続債権者と受遺者への清算手続きをおこなう、限定承認した財産に対しみなし譲渡所得税がかかるなど、その後の手続きの複雑さから、実はそんなに利用されていないのが現状です。
まとめ
借金は相続人だけでなく、債権者にかかわる問題です。
相続人にとっては、相続することによって自分の生活を脅かすことになってしまうおそれのあるものですが、借金の相続を回避するための相続放棄は申述が受理された後に撤回はできませんので慎重におこなう必要があります。
相続が発生し、相続の財産がわからない、相続放棄を検討している場合など、一度、専門家に見積りをとってみてはいかがでしょうか。
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