相続財産と相続税の課税対象になるもの・ならないもの|積極財産・消極財産とは?

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本記事の内容は、いい相続の記事を、相続費用見積ガイドの掲載日(2023年3月28日)時点の法令・制度等に基づき再編集しています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
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相続財産と相続税の課税対象になるもの・ならないもの|積極財産・消極財産とは?

相続財産には、相続をすることで相続人にとってプラスとなる財産だけでなく、相続することでかえってマイナスになる財産もあります。また、相続をしたからと言って、全てが相続税の課税対象になるわけでもありません。

この記事では相続財産について、その種類や課税対象になるものとならないものの考え方、さらに相続財産の調査方法についてご説明します。

相続財産とは何か

あなた(相続人・受遺者)が亡くなられた方(被相続人)から相続または遺贈により承継する財産(遺産)を「相続財産」と言います。

この財産にはさまざまな「権利」と「義務」が含まれており、相続の際にプラスとなる「積極財産」とマイナスになる「消極財産」に分かれる点が大きな特徴です。

相続財産の範囲

基本的な考え方としては、亡くなられた方が所有していた全財産となりますが、これは言い方を変えると「経済的な価値を有するものすべて」ということになります。

一般的には預貯金などの現金や土地・建物などの不動産が思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、問題は「すべて」という部分。例えば、金融機関からの借金や住宅ローンなどの負債や所得税・住民税などの未払金も相続財産の範囲に入ります。

「積極財産」と「消極財産」

承継する財産のうち、経済的な価値のあるプラスの財産を「積極財産」と呼びます。

具体的には「預貯金・有価証券・金融商品(資産)」「車・宝石・貴金属・美術品(動産)」「土地・建物(不動産)」など。貸付金や売掛金などの債権をはじめ、ちょっと特殊なところでは著作権や特許権、意匠権や商標権といった権利関係も含まれます。

反対に相続することでマイナスとなる財産が「消極財産」です。例としては「金融機関からの借金・住宅ローン(負債)」と「未払いの家賃・所得税・住民税(未払金)」などが挙げられます。

積極財産(プラスの財産)

  • 預貯金
  • 手形・小切手・商品券・株券など(有価証券)
  • 金融商品(資産)
  • 車・宝石・貴金属・美術品など(動産)
  • 土地・建物など(不動産)
  • 貸付金・売掛金など(債権)
  • 著作権・特許権・意匠権・商標権など(権利) ほか

消極財産(マイナスの財産)

  • 金融機関からの借金・住宅ローンなど(負債)
  • 未払いの家賃・所得税・住民税など(未払金) ほか

相続財産に含まれる「権利」と「義務」

相続財産に含まれる「権利」

相続財産に含まれる「権利」のうち、代表的なものとしては「物権(不動産や動産の所有権・占有権など)」「債権(預金・貸付金・他者へ一定の行為を請求しうる権利など)」「知的財産権(著作権・特許権・商標権など)」が挙げられます。また、法律で定められたものではありませんが「営業権」もその一つです。

これらはすべて「もらうことができる財産」であり、分類としてはプラスとなるため「積極財産」と考えていいでしょう。

相続財産に含まれる「義務」

一方、相続財産には亡くなられた方の債務を弁済する「義務」も含まれています。借入金があれば返済しなければなりませんし、未払金があれば支払いをする必要があります。

また、亡くなられた方が賃貸人である場合は、賃借人に目的物を使用させる義務を引き継がなければなりません。わかりやすく言えば、土地や建物を貸している場合は、それらが問題なく快適に使うことができる状態を保つということです。

そのほか、他者の債務の保証人等になっていれば、それもマイナスの「消極財産」の一部として取り扱います。

相続財産の調査方法

財産の全容を把握するのは、当人にとっても難しいものです。亡くなられた方がどんなに几帳面だったとしても、家族や親族に滞りなく伝えられるケースは、ほとんどないと言っていいでしょう。遺言書の有無に関わらず、相続財産の調査には非常に時間がかかります。

しかし、相続が発生した場合、相続人の確定とともに必ず行うものですので、どのようにチェックすべきか、それぞれの方法を確認しておきましょう。

積極財産

預貯金・有価証券・金融商品

相続財産の筆頭に挙げられるのが、預貯金や有価証券、金融商品などの資産です。

最初に探しておくべきなのは、何と言っても銀行などの金融機関の預金通帳。これは残高の確認ではなく、お金の流れを把握するための作業だと考えてください。どこからどのくらいの金額が振り込まれているか、引き落とされているかを見ていきましょう。

回数や頻度、間隔なども大切な情報です。そして、同時に金融機関からの郵便物やメールのチェックも忘れずに。現金以外の有価証券や金融商品を探す場合にも役立ちます。

また、近年ではインターネット上にのみ存在する銀行を利用しているかどうかも重要なポイントです。預金通帳やキャッシュカードが存在しないところもあるため、見落とさないようにしましょう。

不動産

亡くなられた方がどのような不動産を所有しているかを調べるには、重要書類の保管場所から固定資産税の通知書や納付書を探し出すところから始めましょう。そこから土地の情報を確認し、法務局で「登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得します。インターネットを利用したオンラインでの請求も可能です。

また、覚えておきたいのは「名寄帳(固定資産課税台帳・土地家屋課税台帳)」と呼ばれるデータの存在です。課税対象となっている固定資産(土地・家屋)を所有者ごとに一覧表にしたもので、自治体から発行してもらうことが可能となっています。閲覧または発行には不動産の所有者との関係を証明する書類が必要です。各自治体に問い合わせてみるといいでしょう。

動産

亡くなられた方が所有していた動産は、自動車をはじめ、宝石や貴金属、美術品や骨董品、家具や家電など、さまざまな種類があるため、膨大な点数になることも少なくありません。

金銭的な価値の高いもの以外は「形見分け」で済みますが、特に気をつけておきたいのは、自分たちで判断が難しい宝石・貴金属・美術品・骨董品の類です。価値によっては相続税にも影響するため、専門家による鑑定も視野に入れておきましょう。

また、自治体に届け出が必要な刀剣類や銃火器類、特殊な薬品なども動産に含まれると考えてください。

株式

株式は、上場株式と非上場株式があり、その取り扱いは大きく異なります。上場株式と非上場株式、どちらも調べていかなければならないため、ここでは両方の確認方法を説明します。

上場株式を調査するには

証券取引所に上場され、取引される株式が「上場株式」です。

上場株式は金融商品取引を行っている証券会社や信託銀行などが所定の口座で管理しているため、まずは重要書類の保管場所から上場株式に関連する「目論見書」や「取引報告書」などの書類を探し出すところから始めましょう。書類を見つけて口座を開設している金融機関が特定できたら「取引残高報告書(評価証明書)」の発行請求を行います。

どうしてもどこの会社の上場株式を所有していたかわからない場合は、日本で唯一の証券集中保管機関である「証券保管振替機構」に、登録済加入者情報の開示請求を行う方法もありますが、郵送のみの受付となっている点に注意が必要です。

非上場株式を調査するには

「非上場株式」について調査する場合も、まずは重要書類の保管場所から非上場株式に関連する書類を探し出すところから始めましょう。

上場していない会社の株券は、基本的に株主からの譲渡もしくは株券発行会社からの新株の割当によって取得するものです。亡くなられた方がその会社の役員などのケースが大半のため、訃報が届いた会社から株式に関する連絡が入ることも。名義書換についても非上場株式は会社とのやりとりになりますので、担当者とのコミュニケーションが大切になります。

消極財産

金融機関からの借金

「消極財産」の代表的なものが金融機関からの借金です。亡くなられた方がどのくらいの金額を借りていたかどうか、そもそもお金を借りているかどうかは、身内にも内緒にしているケースがあるため、慎重に調査していく必要があります。

「積極財産」の項でも説明しましたが、まずは金融機関の預金通帳や郵便物などをチェックしてください。借入額に関しては、信用情報機関の情報を照会する方法もあります。JICC(株式会社日本信用情報機構)、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)それぞれに開示を請求するという方法もあります。

連帯保証

相続財産の調査中に「金銭消費貸借契約書」という書類を発見したときは要注意。連帯保証人欄に亡くなられた方の署名・押印がある場合は、誰かの借金の連帯保証人になっているということですから、相続人は連帯保証の義務をそのまま引き継がなければなりません。

また、重要書類の保管場所に「金銭消費貸借契約書」が見つからなかったとしても、安心するのはまだ早いかもしれません。債権者から亡くなられた方宛に督促状が届いたとき、初めて連帯保証人だったという事実が明らかになるケースもあります。

遅延損害金が生じている可能性もありますので、できるだけ早急に対処した方がいいでしょう。

相続財産以外の相続税の課税対象となる財産

ややこしいのが、相続財産以外にも相続税の課税対象となる財産がある点です。

例えば死亡退職金や生命保険金などは「みなし相続財産」に分類されます。相続財産ではありませんが、課税対象に含まれるため、相続財産の調査時には注意しなければなりません。

そのほかにも「相続開始前3年以内の贈与財産」や「相続時精算課税の適用を受ける財産」なども同様です。ここではそれらの相続税の課税対象となるその他の財産について説明します。

「みなし相続財産」とは

死亡退職金や生命保険金などは、亡くなられた方が所有していた財産ではなく、死亡することによって相続人のものとなる財産です。そのため、民法上では相続財産には入りませんが、相続税を計算する場合には相続財産の一部と「みなし」て課税対象となります。これを一般的に「みなし相続財産」と言い、死亡退職金や生命保険金のほか、受取人が亡くなられた方以外に指定されている年金なども含まれます。

遺産分割の対象とはならず、相続放棄を選択した場合でも受け取ることが可能です。

相続開始前3年以内の贈与財産

相続税対策として生前贈与は有効な手段ですが、3年以内に亡くなられた場合、その生前贈与は無効となり、相続税の計算に足し戻されるというルール(生前贈与加算)があります。

3年間で納付した贈与税に関しては差し引かれるため、二重課税になるわけではありませんが、その金額が相続税より大きかった場合、差額分が還付されることはありません。

このルールは駆け込み生前贈与による相続税の軽減を防ぐ目的があり、基本的には将来の相続人が対象となります。

ただし、生前贈与加算は令和5年の税制改正で7年に延長される予定です。

詳しくは、「令和5年度税制改正の生前贈与加算と相続時精算課税・暦年贈与の節税方法」を解説を参照してください。

相続時精算課税の適用を受ける財産

60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与において選択・利用できるのが「相続時精算課税制度」です。

2,500万円を限度として贈与税が非課税になりますが、この制度を利用して取得した財産と相続財産を合算した財産総額が基礎控除の金額を超えた場合は相続税が課税されます。

ただし、相続時積算課税は令和5年の税制改正で内容に変更がある予定です。

詳しくは、「令和5年度税制改正の生前贈与加算と相続時精算課税・暦年贈与の節税方法」を解説を参照してください。

相続税が非課税になる財産

すべての財産に相続税が課せられるわけではありません。例えば、申告期限までに国や地方公共団体、特定の公益法人や認定特定NPO法人等に寄付した相続財産は課税対象とはなりません。

また、生命保険金は「みなし相続財産」になると説明しましたが「法定相続人の人数×500万円」までは非課税となります。死亡退職金についても同じ条件が適用されるため、覚えておくといいでしょう。

通夜や葬儀、法要で参列者の方々からいただく香典や葬儀費用などについても課税されることはありません。

参列者からの香典

通夜や葬儀、法要などで参列者の方々からいただく香典は、喪主への贈与と見なされるため、相続財産には当たらず、相続税が課税されることはありません(贈与税も発生しません)。基本的に葬儀費用として使われるため、相当大きな金額の香典でない限りは所得税や贈与税が課税されることもなく、確定申告も不要です。

なお、法人が喪主となる会社役員などの社葬の場合は香典に法人税が発生するケースに注意してください。

葬儀費用

亡くなられた方の葬儀費用は香典で賄われると前項で説明しましたが、その総額が香典を超えるようなケースでは、相続財産を充当する場合が多いと言われています。この葬儀費用に関しては、相続税から控除できることを覚えておきましょう。領収証が出ないようなものでも、内訳と金額をメモしておきたいものです。

ただし、葬儀に関するすべての費用が控除対象となるわけではありません。例えば、香典返しの費用をはじめ、墓石や墓地の購入費や借入金、初七日以降の法事にかかる費用などは対象外となります。

まとめ

さまざまな「権利」と「義務」が含まれているほか、相続の際にプラスとなる「積極財産」とマイナスになる「消極財産」に分かれる相続財産。調査に関してはできるだけ自分たちで行う必要がありますが、想像以上に時間がないことを肝に銘じておきましょう。

相続税の申告および納付の期限は「相続開始の翌日から10ヵ月後」ですが、相続財産の確定までには、おおよそ60日しかありません。2ヵ月以内に調査を終えて遺産リストを作成し、3ヵ月以内を目安に遺産継承の判断が必要となるからです。状況に応じて、弁護士や司法書士、行政書士、税理士など、頼りになるプロの力を借りることも早めに検討してください。

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