相続登記の費用相場|概算と内訳から名義変更を放置するリスクまで解説【司法書士監修】

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本記事の内容は、原則、記事執筆日(2020年11月2日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

家や土地など、亡くなった方名義の不動産がある場合には名義変更(相続登記)をおこなう必要があります。ですが、相続登記は一生に何度も経験するものではなく、「いくらくらい費用がかかるのだろう?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

ここでは、相続登記にかかる合計額、相続登記にかかる3種類の費用、相続登記の費用は誰が負担するべきかといったことについて、詳しくご説明していきます。

初めて遺産相続をおこなう方にもわかりやすく解説しますので、ぜひご参考にしてください。

相続登記の費用相場|概算と内訳から名義変更を放置するリスクまで解説【司法書士監修】

家や土地など、亡くなった方名義の不動産がある場合には名義変更(相続登記)をおこなう必要があります。ですが、相続登記は一生に何度も経験するものではなく、「いくらくらい費用がかかるのだろう?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

ここでは、相続登記にかかる合計額、相続登記にかかる3種類の費用、相続登記の費用は誰が負担するべきかといったことについて、詳しくご説明していきます。

初めて遺産相続をおこなう方にもわかりやすく解説しますので、ぜひご参考にしてください。

この記事の監修者

司法書士松田法務事務所

松田裕成

〈司法書士・行政書士〉

2015年に司法書士試験に合格。2017年に認定考査に合格し簡裁訴訟代理権をもつ認定司法書士となり、司法書士松田法務事務所を開設。行政書士・宅建・2級ファイナンシャルプランニング技能士・測量士補・マンション管理士・管理業務主任者・防火管理者・簿記等多数の資格を保有。また、松本大学にて講師として法律科目の講義を担当するなど、多様な場面でオールラウンドに活躍する。

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相続登記にかかる費用とは

まずは相続登記の手続きの流れを確認し、必要となる費用の概観をつかみましょう。

相続登記の流れ

相続が発生(=被相続人がご逝去)してから相続登記をおこなうまでには、次のようなステップがあります。

相続人を確認する

不動産の有無に限らず、相続が発生した際には相続人の立場になるのが誰なのかを確定させる必要があります。

相続人の確認は被相続人の戸籍を集めることによっておこないます。被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、家族関係を確認しましょう。

対象となる不動産を把握する

次に被相続人名義の不動産を把握する必要があります。

対象の不動産がわからない場合は、「名寄帳(なよせちょう)」とよばれる所有者ごとの不動産の一覧表を取得することで調べられますので、必要な場合には市区町村役場で取得しましょう。費用は市区町村によって異なりますが、1通300円程度であることが一般的です。

ただし、名寄帳は市区町村ごとの取得となるため、対象不動産を調べるには市区町村の特定が必要であることには注意が必要です。

誰が相続するかを決める

相続する人と対象を確認したら、その不動産を誰が相続するのかを決めましょう。

相続の方法には主に、次の3つがあります。

①(遺言がある場合)遺言の内容にしたがって相続する

遺言に示された者が相続する

②法定相続分どおりに相続する

法律で定められた相続分に応じて分割する。相続人が複数の場合は共有名義となる

③遺産分割協議によって相続する

相続人全員の話し合いで誰が相続するかを決める

不動産を共有名義とすると、次の相続の際にトラブルの原因となったり、売却がしづらくなってしまうなどのデメリットがあるため、1名が単独で相続するのが無難といえるでしょう。

必要な書類を準備する

相続登記には多くの書類が必要となります。ケースによって必要書類は異なりますので、専門家に相談するなどして自身のケースに必要な書類を把握しましょう。

書類の取得にかかる費用については、次の章で詳しくご紹介します。書類の準備は大変煩雑で時間もかかるため、司法書士などの専門家に代行を依頼するのもおすすめです。

法務局で手続きをおこなう

必要書類を揃えたら、法務局で登記の手続きをおこないます。自分でおこなう場合、法務局への申請には次の3つの方法があります。

①窓口申請

対象不動産の所在地を管轄する法務局に出向いて申請をおこないます。メリットは、窓口でスタッフに相談をしながら申請できるという点です。一方、デメリットは開庁時間が17時ごろまでと短かったり、土日祝日は閉庁していたりと限られた時間でしか手続きができない点が挙げられます。

②郵送申請

書類を郵送し申請をおこないます。メリットは開庁時間によらず申請ができます。しかし、郵送費がかかること、書類に不備があった場合何度も郵送を繰り返さなければならないことがデメリットといえます。

③オンライン申請

インターネットで申請をおこないます。自宅にいながらにして申請ができるのがメリットですが、添付書類については窓口へ持って行くか、もしくは郵送する必要があります。

上記のほかに、司法書士などの専門家に依頼するという方法もあります。専門家に代行を頼む場合、報酬は必要になるものの、手続きにかかる手間や時間をカットすることができます。

相続登記にかかる3種類の費用(概算)

相続登記で必要となる費用は、大きく次の3種類に分けることができます。

費用の詳細は次章で解説しますが、ここではおおまかなイメージをつかんでみてください。

①書類の準備にかかる費用

登記申請に使用する書類の用意にかかる費用です。

必要書類の内容は相続人の人数や被相続人の転籍の回数(戸籍を移した回数)や市区町村の手数料などケースによって異なりますが、役所で取得する書類にかかる費用はおおむね5,000円〜15,000円程度が相場です。

これに加えて、遺産分割協議書や相続関係説明図の作成を専門家に依頼する場合には、別途費用が発生します。

②登記申請にかかる費用(登録免許税)

相続登記の申請をおこなうと、「登録免許税」と呼ばれる税金がかかります。

登録免許税は、以下の式で計算することができます。

固定資産税評価額×0.4%

詳しくはこの後解説しますが、例として次のような不動産を相続する場合を考えてみましょう。

  • 家屋の固定資産税評価額:500万円
  • 土地の固定資産税評価額:1,000万円

この場合、登録免許税は

(500万円+1,000万円)×0.004 = 6万円

と計算できます。

③専門家への報酬

専門家に手続き代行を依頼する場合、専門家に支払う報酬が必要になります。

相続登記の申請を代行できるのは司法書士および弁護士ですが、費用面などから司法書士に依頼をするのが一般的です。また、遺産分割協議書等の作成と戸籍等の収集までなら行政書士に依頼することも可能です。

事務所により異なりますが、司法書士への報酬は5万円〜15万円程度が相場です。

相続登記にかかる費用の相場

以上をまとめると、相続登記にかかる合計費用の概算は次のようになります。

専門家に依頼する場合

  • 書類の準備費用:5,000〜15,000円程度
  • 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%
  • 専門家への報酬:6万円〜10万円程度

自分で手続きする場合

  • 書類の準備費用:5,000〜15,000円程度
  • 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%

相続登記にかかる費用のイメージはつかめたでしょうか?

次からは、各費用の詳細について解説します。

①書類の準備にかかる費用

主な必要書類と取得費用の相場は次のとおりです。(○:必要、×:不要)

1通当たりの費用相場遺言により相続する場合法定相続分どおりに相続する場合遺産分割協議により相続する場合
被相続人の戸籍謄本等 ※それぞれのケースに応じて必要な通数が異なります。450〜750円程度○ ※被相続人の戸籍謄本と取得者が相続人であることが分かる戸籍謄本等が必要(兼ねる場合1通でOK)○ ※出生から死亡までのすべての戸籍謄本等が必要○ ※出生から死亡までのすべての戸籍謄本等が必要
被相続人の住民票の除票200〜400円程度
相続人全員の戸籍謄本または抄本450円△ 不動産取得者のみ必要
相続人全員の印鑑証明書200〜400円程度××
不動産取得者の住民票200~400円程度
郵送費(郵送で取得する場合の切手代,定額小為替購入手数料)500円程度
遺産分割協議書専門家に依頼する場合5万〜6万円程度××
遺言書××

特に被相続人の戸籍集めは多くの方が苦戦されるところです。遺言どおりに相続する場合以外は、被相続人が生まれたところから亡くなったところまで一続きの戸籍を取得する必要があり、通数が多くなると費用も高額になります。

また、これらの書類のほかに、相続登記をする前に対象不動産の登記簿謄本か登記情報を取得する必要があります。これは物件の名義が被相続人のものとなっているかの確認と、登記申請書に記載する不動産の情報を正確に把握するためです。請求の方法などでも異なりますが、登記簿謄本の取得には1通につき480円~600円の手数料が必要です。

②登記申請にかかる費用(登録免許税)

相続登記の申請には、「登録免許税」という税金がかかります。

登録免許税の計算方法

登録免許税は、以下の式で計算をおこないます。

固定資産税評価額×0.4%

ただし、遺贈(遺言により相続人以外の者が受け継ぐこと)の場合には「固定資産税評価額×2%」となります。

固定資産税評価額は1,000円未満を切り捨てて計算しますが、1,000円に満たない場合には1,000円として計算をおこないます。上の計算式により算出した登録免許税が1,000円に満たない場合には、納税額は1,000円になります。

固定資産税評価額を調べるには?

固定資産税評価額とは、固定資産税の基準となる価格で、3年に一度見直しがおこなわれています。

固定資産税評価額は、毎年4〜6月ごろ不動産の所有者に送られてくる固定資産税の納税通知書を見ることで確認できます。このなかに同封されている「課税明細書」をチェックしてみましょう。「価格」もしくは「評価額」の欄に記載されている金額を確認します。

もし課税明細書が見つからない場合には、本人確認書類や被相続人の死亡の事実がわかる書類、証明手数料などを持参すれば管轄の市区町村役場で取得することが可能です。必要書類や手数料は市区町村により異なりますので、詳しくは該当の市区町村の情報をご確認ください。

③専門家への報酬

司法書士などの専門家に相続登記の代行を依頼する場合には、専門家への報酬が必要になります。

おおよその報酬相場は6万円〜10万円ほど。ただし、相続人の人数や対象不動産の件数によっても異なります。対象不動産の管轄法務局が複数にわたっていたり、相続人が多数に及ぶ場合には高額になる傾向にあります。

相続登記の費用に関するQ&A

最後に、相続登記の費用に関するよくある疑問と、それに対する回答をまとめます。

専門家に依頼するメリットは?自分でやる方がお得?

メリットデメリット
  • 複雑な手続きを勉強する必要がない
  • 平日に仕事を休んで書類収集や申請をおこなう必要がない
  • 慣れない法務局に出向いて手続きをおこなう必要がない
  • 報酬が発生するため、自分で手続きするより費用がかかる

相続登記の手続きを司法書士などの専門家に依頼すると、次のようなメリットとデメリットがあります。

自分で手続きをおこなえば費用を抑えることができますが、一方で書類の準備や申請手続きは専門的で煩雑であるため、手間や時間がかかります。仕事を休みづらい方や手続きが苦手な方は専門家に相談するのがおすすめです。

信頼できる専門家の選び方は?

専門家に相続登記の手続きを依頼するにも、どのように選んで良いかわからないという方もいらっしゃるかと思います。

信頼できる専門家に依頼するには、

  • 無料相談できる専門家を選ぶ
  • 実績が豊富な専門家を選ぶ

ということがおすすめです。

POINT
近くの専門家でないとダメ?

相続登記の手続きは郵送やオンラインでも可能であるため、依頼する専門家は必ずしもご自身の近所や対象不動産の近くに事務所を構えている必要はありません。

相続登記の費用は誰が負担する?

相続登記にかかる費用を誰が負担するかは、法律や規則で決められているわけではありません。

一般的には、1名で不動産を取得する場合にはその人が、相続登記後に売却をして売却代金を複数名で分ける場合にはそのメンバーで按分するパターンが多いでしょう。

いずれの場合も、後にトラブルが起きないよう相続人全員でしっかりと話し合いをすることをおすすめします。

相続登記を放置しているとどうなる?

相続した不動産の名義変更をせずに置いておくと、次のようなリスクやデメリットが生じます。

費用や時間がより多くかかってしまう

時間の経過によって次の相続が起こってしまった場合、相続人が多数になり、手続きのための費用や時間がより多く必要になってしまいます。

また、長い時間が経つと相続人の中に認知症など判断能力が衰えてしまう方が出てくるケースもあります。そうした場合には遺産分割協議ができなくなってしまう可能性があり、成年後見制度を利用する必要が出てくると多くの費用と時間がかかってしまいます。

さらに、相続関係が複雑になることで、遺産分割協議が難しくなりトラブルに発展するケースも少なくありません。最悪の場合、親族間に修復不能な亀裂をもたらしてしまうこともあります。

親族間のトラブルの原因になる

放置をしておくことで相続関係が複雑になってしまい、遺産分割協議がしづらくなる可能性があります。こうしたケースではトラブルに発展しやすく、最悪の場合は親族間に修復できない亀裂をもたらしてしまうこともあります。

不動産の売却ができない

相続登記をしていないと、不動産を売却しようと考えてもすることができません。

不動産を担保とした借り入れができない

相続登記をしていないと、借り入れの際に不動産を担保として設定することができません。

債権者に相続持分を差し押さえられてしまう

相続人の中に借金の支払いを滞らせている方がいた場合、債権者に不動産の相続持分を差し押さえられてしまうことがあります。

また、相続登記の放置は、昨今問題となっている「空き家」問題の原因の一つにもなっていると言われています。所有者のわからない不動産はまちづくりなどの公共事業の妨げとなってしまいます。

相続登記の義務化

所有者不明土地問題に関する改正不動産登記法などの関連法案が2021年4月21日、参院本会議で可決し成立しました。これにより相続登記が義務化されることになりました。

まとめ

相続登記にかかる費用についてご紹介してきました。

登記の費用相場は、

  • 書類の準備費用:5,000〜1万5,000円程度
  • 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%
  • 専門家への報酬:6万円〜10万円程度

であり、自分ですべて申請する方が費用は抑えられる一方、手続きは煩雑で時間がかかってしまうというデメリットがあります。

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